故・室谷邦雄 名誉会長
縁あって、紙敷のコートで一緒にテニスを楽しむことになりました。数多くある趣味の中からテニスを選ぶことによって、同じ仲間になったわけです。
テニスは七、八歳の児童から八十歳代まで続けて楽しめるスポーツです。そしてテニスは生涯の趣味としてもっとも魅力のあるものの一つだと思います。簡単にうまくなれないのが、何よりもよいのではないでしょうか。それだけに工夫をこらす必要があり、また練習を重ねなければならないと思います。実に奥深いスポーツです。ある日突然いい球が打てたり、いままでとれなかった球が取れた時のうれしさは、何ものにもかえられないものです。一見単調に見える練習も、研究と期待がいっぱい含まれております。老若男女、体力に応じてそれぞれ楽しめるものがいいし、プレイによって多くの人と交際できる楽しみもまた格別です。
テニスには人生と相通ずる孤独、協調、闘魂、忍耐、歓喜といったさまざまな要素があります。これを一つ一つかみしめていくことは、人生を一生懸命に生きることと同じで、生き甲斐とか、充実した人生といった満足感にもつながることになります。人生はやり直しがききません。しかしテニスは何回でも、自分の考えを実行に移して、実験してみることができます。今日の失敗は明日の進歩につながります。努力、責任、闘志、協力、勇気、判断、これらのことが、コートを走り回っているうちに自ら磨かれてゆきます
何時までも、元気でテニスを続けてゆけるようにしてください。私たちは、紙敷コートという立派なコートをクラブ専用で使うことができる立場にあります。本当にありがたいことです。
次に紙敷テニスクラブ発足以来の経過をお知らせし、皆さんのご協力をお願いしたいと思います。
紙敷テニスクラブは昭和五十九年四月、千葉県水道局、松戸市教育委員会、松戸市テニス協会、松戸市軟式庭球連盟のご好意によって発足したものです。水道局松戸給水場の構内にあるハードコート三面がクラブの専用コートです。給水場の敷地買収のとき、松戸市民が協力したという事情もあり、このコートを地元還元の趣旨で県から市役所に運営が委ねられました。
松戸市役所としては、この種のケースは、まったく初めてのことであり、この管理をどうするか、苦慮しておりました。給水場は、市民の飲料水を直接家庭に送水する最終段階で、ここで万一、細菌、毒物などが混入する事故が生じた場合は大変なことになります。素性の知れない人が出入りしては困るという水道局側の意向もあり、その管理には極めて厳重な条件がつけられております。市では、市の管理人を置くことを全く考えていない。県と市の行政の中で、一般市民にコートを開放して、円滑に運営できるだろうか、事故が生じたときの責任は誰がとるのか、など種々問題がありました。
テニス協会加盟のクラブ持ち回りで管理するという案もありましたが、事故を確認して、責任を取る体制に自信が持てないということで、新しいクラブを結成して、このクラブに運営を一任するという方式が最適ということになり、紙敷テニスクラブ結成の計画がたてられたのです。
私は当時、松戸市テニス協会の会長をしていたので、市の社会体育課の課長から相談を受け、クラブ結成を引き受けることになりました。
偶々東部スポーツセンターのコートで十人位の人が初代理事長になった関口紘也さんをコーチに練習しているグループがあることを知り、その練習を見に行きました。その練習風景を見て、この人達なら、自信を持って、コートの管理をお任せできる方々だという確信を得たのです。
関口さんのテニスにかける情熱は驚くべきものでした。指導を受けている皆さんは関口さんを心から信頼している人達でした。関口さんにコート管理のことをお願いしたところ、初心者が楽しくテニスをやれるコートを育てたいという私の理想と一致するところもあり、私が応援してくれるなら、一肌ぬごうということになったわけです。これが紙敷テニスクラブ発足の萌芽であります。
関口さんは平成元年十二月他界されました。生前紙敷クラブに尽くされた功績は筆舌につくし難いものがあります。私の家へ足しげく通い、私と一緒に水道局や市役所へ日参しました。そしてクラブの組織、コートの管理、コートの使用手続きなどについて事細かく打ち合わせて、軌道に乗せてくれました。駐車場を作るため林の中を切り開いたり、鎌で下草を刈ったりしてくれました。何せ、公営コートを一つのクラブが責任をもって運営するというケースは全国的にも稀なことであります。
○公営コートの管理、利用について模範となるようにしよう。
○コートを使用する人が皆、管理人であるということの意識を忘れないようにしよう。
○初心者が大いばりで楽しくプレーできるコートにしよう。
○上手な人がコートを独占することがないようにしよう。
○誰でもペアを組んでプレーをするようにしよう。
○上手な人は常に下手な人の相手になってやるようにしよう。
○会報を発行して、クラブの情報をみんなに伝えよう。
ということが、当初定めたクラブ運営の基本方針です。
この方針がその後脈々と引き継がれていることは心強い限りであります。
クラブ結成以来満六年を経過し、基礎も確立しました。この間役員を引き受けてくださった皆さんのご協力により逐年クラブが発展しておりますことはご同慶にたえない次第です。
会員全体が、クラブの管理人であるという建前を何時までも忘れることなく、クラブ発展に寄与してくださることを念願してやみません。
〔1990年(平成2年)8月〕